先日、読売新聞の「地球を読む」という記事コーナーに、細谷雄一氏(慶応大学教授)の記事に思わず目が止まりました。
その内容は、
政治の世界がおかしくなってきている、いったい何が起きているのか。
英国のEU離脱の背景に潜んでいた「真実後」(ポスト・トルース)という新しい用語ついて述べられていました。
それは、今や政治の世界では、虚偽を語っても検証されず、批判もされない。真実を語ることはもはや重要ではなくなってきている。
たとえ虚偽を語っても、それが「誇張」だったと弁明し、「言い間違い」をしたとごまかせば、許容される。
政治家は、自らの正義を実現するための堂々と虚偽を語るようになったことが、日常化している、と指摘しています。
特に、EU離脱問題で、残留派と離脱派が取った戦略は対照的であり、残留派は可能な限り信頼できる客観的なデータに基づいて、EU加盟の意義を国民に理解してもらおうと試みたが、あまりに複雑で難解であり、多くの国民には理解が困難だった。
他方で、離脱派は正確なデータや事実に基づくことなく、感情に訴えて国民を誘導しており、具体的には英国の法律の75%がEUで立法されていると批判し、EUコントロールから自国を奪い返すと愛国心にアピールする戦略を用いた。
実際には、国内法のわずか6.8%しかEUで立法されているに過ぎず、2次立法を入れても2割程度と限定的で、根拠のない虚偽のデータを繰り返し用いて英国民を洗脳し、それを真実だと多くの国民が信じ、投票の判断に影響を及ぼす結果となった。
虚偽の情報を信じた英国民の一部はだまされたと気づき、離脱に1票を投じたことを後悔しているのは報道でもあったとおりです。
日本でも「真実後の政治」が広がっており、「いつかは徴兵制?」「戦争法」「年金が破たん」などと、ことさら可能性がある、というニュアンスだけで国民の不安を煽る戦略を選んで、建設的な政策論争に打ってでることを放棄しているともいえるでしょう。
これからEU離脱は、英国経済に壊滅的な打撃を与えることになるのと同時に、我が国でも真実を犠牲にするようなことがあってはならないと思う。