性犯罪の起訴状に被害者の実名を記載すべきかどうか。
このことについて、検察と裁判所が対立する異例の事態が起こっています。
詳しくは、児童が公園のトイレで、わいせつ行為をされた事件で、東京地検が強制わいせつの起訴状に、被害児童の氏名を匿名で記載したことに対し、東京地方裁判所は実名を記すよう求めているのです。
被害児童の両親は当初、逆恨みなどを恐れて「氏名を出すなら告訴を取り下げる」と東京地検に伝えており、親告罪である強制わいせつ罪は告訴がなければ、起訴できない現状を踏まえ、地検としては被害者の泣き寝入りを防ぐためにもやむを得ない措置だったと私も理解できます。
その一方で、地方裁判所が疑義を呈したのは、刑事裁判の実名主義が損なわれることへの懸念からだと推察されます。
もちろん性犯罪を理由にしたすべての匿名記載を正当化することはないにせよ、杓子定規な対応をすべきでないと考えます。
先般起きたストーカー事件における警察が逮捕状に記された被害者の住所を読み上げたことから、加害者に転居先を知られ、事件が発展したことを契機に被害者保護の視点を改めて議論していくべきだと思います。